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国内にある文化財の海外流出

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国内にある文化財の海外流出。これはデリケートな問題です。

「所さん大変ですよ」で紹介されていたように、なぜそのようなことが起こるのか?

という理由の一つは、代々受け継いだものだが次の代が興味がなく大事にされるとは思えないので、誰か大切にしてもらえる人に譲りたい。という方が多いようです。

 

まだ番組をご覧になってない方はこちら↓

 

テレビ放送の流れとしてはこんな印象を受けました。

 

①謎のオークションとは?

→中国美術のオークションが開かれ、数多くの美術品が取引されている。

②ではそれらの美術品はどこから出てきたものなのか?

→鑑定会のようすが映し出され、そこには作品を鑑定、査定され買い取ってもらうために多くの美術品が持ってこられていることが判明。

そして、(これは放送の中では言われていませんが)

買い取られたものがオークションに出品される。

 

③なぜ多くの美術品が鑑定・査定に持ち込まれるのか?

「自分の次の世代が受け継がれた美術品に興味がないし、

大切にしてもらえると思えないから自分の代でちゃんと処分したい、

大切にしてもらえるところへ譲りたい」

といったものでした。

 

実際当店へ買取の依頼をしてこられる方の多くも同じような理由で買取を希望されます。

 

④日本の文化財保護の現状の一例として

神保町の古書店 南宋時代の貴重書を持っているが、保管の観点から手放したい、しかるべきところに収まればと思っている。過去に古書販売会に出品した。

その時に中国人からの入札があり1億を超えるの高額になったが、その際にある大学教授から「日本に代々つたわる貴重なものなのでなんとか国内に残すようにしてほしい」といわれ、出品取りやめにした。

慶応大の教授のコメント

“中国に行くとこの本は無くなってしまう(どこにあるかわからなくなってしまう)。このままでは日本文化は終わりですね。”

国(文化庁)に買取を依頼したが、”検討する”の答えだけでまだ返答はない。

国際ジャーナリスト モーリー・ロバートソンさんのコメント:

古書の買い戻しは中国の国家プロジェクト「国家古籍保護工作委員会」2007年 

『本は知識の象徴』なので国をあげて取り組んでいる。

年間100億円は予算を投じていると予測されている。

===========

ここまでがテレビで放送された内容でした。

 

一般の人だけでなく、業者も貴重な作品を持っている。

番組内で紹介された通り、一般のご家庭にも貴重なものが代々残されていますが、限られたお店にはなりますが、古書店や美術商などの業者も重要文化財や博物館級の作品を持っています。

一般の方がその貴重な作品をどう扱って良いかわからず手放されるように、我々プロの業者の中にもあまりに特別な作品は手元に置いておいておくよりも、大切に保管していただけるコレクターや美術館などの公の施設や国に譲りたいと思っている方もいらっしゃる、ということが番組からお分りいただけたと思います。

 

ではなぜ中国に?

大きな原因は、

 

・価格の高騰。貴重であればあるほど高価で買えない。

 

決して国内にコレクターがいないわけではありません。

しかし、国際的に中国美術の価格が高騰したので、個人コレクターは元より美術館や公共機関、国でさえ購入することができないのです。

それゆえにオークション会社を通じて、作品が海外(主に中国)に出て行っている、ということです。

 

オークション会社の仕組み

オークション会社が何をしているかというと、

会社(組織)として、専門家を雇い、作品を集め、富裕層に広告宣伝をし、作品を売却する。

そして落札(売れた)作品の買い手と売り手、両方から手数料を受け取ります。

 

当店も取引のあるオークション会社がありますが、

彼らは私たちが知らない古美術愛好家・コレクター、国内外の美術館・博物館とコネクションがあり、

出品される作品を紹介、営業してくれます。

つまり手数料は取られるものの、作品を探している方と、作品を譲りたいと思っている所蔵者をつなげてくれる存在です。

(もちろんいつも売れるとは限りませんが。)

 

本当の問題は国や自治体が文化財を守る意識が低いこと

番組では大学教授が「このままでは日本文化は終わりですね」とコメントされていましたが、

現状としては特に中国美術に関して貴重な作品が海外に出て行くのも仕方がない、と言わざるを得ないと思います。

なぜなら、日本国にその危機感がなく、

それに加え圧倒的な国外からの需要の大きさが存在するからです。

 

それこそ中国政府は国家プロジェクトとして、買い戻しに取り組んでいいるわけです。

それだけでなく国以外にも個人のコレクターが数多くいらっしゃいますし、その中には私設美術館を建設するほどの方もいます。

 所蔵者からすると、欲しいという方が大勢いて、さらにこの価格の高騰ですから(需要が高まったので当然ですが)、手放したいと言うのも当然と言えるでしょう。

 

では、国がそれに対して何か策を投じているのか?というと、

古美術商の業界には特に何も聞こえてきません。

番組に出られていたような今の状況を憂いでいる研究者の方はたくさんいらっしゃると思います。

 

もし権威のある方が集まり、日本もプロジェクトができると何か変わるかもしれませんが。。。

 

現状としては、日本それぞれの地方で有名な(だった)偉人や文化人が残した書画などの美術作品は、地元の自治体からも大切にされなかったせいか多くの方が忘れられてしまっています。

 

それも文化財保護のために国から予算が降りてきていないからなのかもしれません。

いずれにせよ無くなったものを取り戻すことはほぼ無理でしょう。

 

国も本当に貴重なものを国の宝として認め、国内に留めておきたいのであれば何らかの策を投じなければ、海外流出に歯止めはかからないでしょう。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

以上が番組を見た感想と、一古美術商として番組をご覧になった方へ知っておいていただきたいと思った内容の補足説明でした。

ありがとうございました。

 

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