展覧会で作品を鑑賞する方法
京都国立博物館で開催中の展覧会『禅』に行ってきました。
頂相(お坊さんの肖像画)や仏様、文殊菩薩に韋駄天など仏教に関する様々な作品が並んでいました。
それに加えて、大徳寺や相国寺などお寺にあった襖絵や、そこに伝わった山水画などの掛け軸も多く見られました。
そのほとんどが鎌倉、南北朝、室町時代のめったに見ることのできない作品ばかりです。ありがたいことに連休中にしてはお客さんも少なくゆっくり作品を楽しむことができました。
ただせっかく南北朝・室町時代の国宝や重要文化材などの名品が並んでいるのに、その鑑賞の仕方に思わず「もったいないな」と感じてしまいました。
今日は特に南北朝・室町の山水画を展覧会で見る際の鑑賞方法についてお伝えしたいと思います。
離れて見る
作品をみている人を見ると、そのほとんどがガラスケースにへばりつくように作品をご覧になっています。
”なにが”、”どのように”描かれているのか、その詳細までしっかり見よう!
ということなのかもしれませんが、
それでは作品を50%しか楽しめていません。
なぜならそれでは作品の全体像を把握することができないからです。
南北朝・室町の作品は、一番手前に描かれた川の流れをさかのぼり、流れのもとになる渓谷、そして奥に続く山々、何も描かれていないその空白の空間まで目線を奥へ奥へと誘われます。まるで永遠と続いているかのようなスーーッと奥行きを感じる作品が多く見られます。
それが近くで詳細を見ようとしていると気がつかないのです。
ですから、作品を見る際は必ず近くでみて、それから離れても見るようにしてください。作品が大きいものほど十分距離をとって、離れてみてみてください。
平面に描かれた作品が立体的に、グーーッと奥に広がる世界が見えてきます。
近くで見ている時には気づかなかった全体像、その作品の持つ空気(オーラとでもいいましょうか)を感じることもできます。
時間をかける
最近は人気の展覧会があるとどっと人が押し寄せて、人の流れに合わせてみないと作品がみられないといった残念な展覧会もあります。
しかし本来は一つ一つ作品を時間をかけて楽しみたいですし、ある程度時間をかけないと作品を鑑賞したとはいえず、「ただ見ただけ」になってしまします。
椅子に座る
展示がされている部屋の真ん中に椅子が置いてあることがあります。
これは単純に「休んでください」ではありませんよ!
『座ってゆっくり作品を鑑賞してください』というサインでもあります。
椅子に座ることで得られる効果は、
①座ることで目線が下がります。
本来畳など床に座る文化の中で作品は生まれていますから、見る人の目線は座った状態であることを前提に作品は描かれています。
②先に述べたように距離をとって作品を見ることができます。
特に屏風や襖絵は作品自体がとても大きいので、全体を見るにはそれだけ距離を取らねばなりません。
展覧会をする美術館側もこの作品はゆっくり見てもらいたいと思ったところにその配慮を見ることができます。
まとめ
①近くだけでなく離れても作品を鑑賞しましょう。
②ゆっくり時間をかけて作品を楽しみましょう。
江戸期の作品もそうなのですが、古ければ古いほど、その作者・作品の持つ精神性やその時代の持つ空気が作品に強く遺っています。
それを感じるには近づいたり、離れたりしながら時間をかけて鑑賞することが必要になります。
どうかゆっくり鑑賞したいと感じた作品がありましたら、人の流れに合わせて作品を見るのではなく、ガラスから距離をとって立ち止まり(人の流れには配慮しつつ)、じっくり鑑賞してみてください。
きっともっと多くのことが見え、感じられ、楽しむことができると思います。
まだまだ貴重な作品の並ぶ素晴らしい展覧会が数多く開催中ですので、
ぜひこの鑑賞の仕方を参考にしてみてください。